テラ・アーツ・ファクトリー 


Necernji list

『デズデモーナ』クロアチア現地製作版



Necernji list 1999.8.17  (クロアチア全国紙)
【タイトル】それはフェスティバルを直撃した、資金から宿泊まで
【サブタイトル】海外からのゲストは大変な状況にさらされている。
若者たちは『デズデモーナ』を気に入った。 

 

【本文インタビュー記事翻訳】
公演の前に私たちは東京から来たTAF(テラ・アーツ・ファクトリー)の林英樹に話 を聞いた。われわれの会話は非常に変わったやり取りから始まった。すなわち、 今年のMKFMフェスティバルが深刻に内在させた問題を考察すること、経済問題、 宿泊も含めた公演のための必要な要素に至るフェスティバル主催者としての取り 組み方と責任の問題の指摘である。今年のMKFMに関しては、NATO空爆をきっ かけに起きた経済問題に端を発し、多くの者がその問題点を指摘した。フェスティ バルが危機にさらされた時の対応は改善されなければならない。演劇と演劇人が 国際的信用、視線の中でそれ自体を問われている。

幸いにも公演は最後までやり通すことができた。俳優たちはプーラ出身の若い俳 優である。彼らは困難な条件下でも非常にいい仕事をしたと林は語ってくれた。

―どのようにして、今回のクロアチアと日本の企画が成立したのですか?

昨年のMKFMに招聘され、ワークショップの参加メンバーに好感を持ちました。フェ スティバルデレクターのダルコ・ルキッチから今年再び招聘を受けたのですが、私 はワークショップだけではなく、もう一歩進めた企画を行えないかと提案したので す。そして私は外国人と一緒に仕事をする良い機会を与えられました。これはクロ アチアの演劇人だけでなく、われわれにとっても幸運な経験となりました。

―なぜ、シェイクスピアの『オセロー』を原作として選んだのですか?

私は、オーソドックスな芝居にあまり興味がありません。今回の舞台は、'演劇につ いて考察する演劇'とも言えます。世界中にいるシェイクスピア・ファンに対する反 歌でもあります。いったん原作のテキストを解体し、俳優の身体を通じて再構成し てみたのです。『オセロー』を採用したのは、その悲劇が白と黒、異なる人種間の 結婚によって引き起こされているという点に注目したからです。この作品は異人種 間の結婚による悲劇だけでなく、異質であることによって引き起こされる誤解や悲 劇にも論及しています。

―異質性の克服という点で今回の仕事は成功されたと思いますか?

はい。クロアチアの俳優たちはよくやりました。彼らは演出の考えを鋭くキャッチ し、共感してくれました。今回のコラボレーションは誰もが成功と言ってくれました。

―あなたの訓練メソッドや演出方法には、日本の伝統演劇の発想が影響している と思います。どのようにしてクロアチアの俳優たちは理解したのでしょう。また、クロ アチアの観客はそれをどう受け止めたのでしょう?

作品のコンセプトは誰でも理解し共有できる、人類に共通する普遍的なものです。 実際私は日本の伝統演劇の人間ではありませんし、日本の伝統演劇をそのまま 使うのでなく、その中にある基礎的な要素に着目しているのです。日本の伝統文 化の核心部には現代においても革新的で実験的な要素がたくさん含まれており、 それをこのプロジェクトの中に含みたかったのです。
 
観客に関してはたとえば、日本においてさえ能をそのまま上演しても99%の日本 人は理解できません。『デズデモーナ』は若いクロアチアの観客が見ても楽しめる ものになっていると思います。



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[リンク] シアターファクトリー企画 林英樹の演劇ワークショップ