グラス・イストレ紙 1999年7月31日
【タイトル】林英樹、シェイクスピアの『オセロー』を改作、人種の違
いが生み出す悲劇を取り上げる。
【サブタイトル】第四回MKFM(国際青年演劇フェスティバル)の特別企画がプーラ
のドラマ・グループと日本のTERRA ARTS FACTORY(TAF・東京)によって行わ
れる。その名は『デズデモーナ・プロジェクト』。リーダーはTAFの設立者で、大学で
文学を学び、また歌舞伎や文楽など日本の伝統演劇の演技やドラマツルギーを
体験した林英樹。
演劇教育の師は世界中でワークショップを指導し、今回、日本とクロアチアの最初
の国際共同制作作品を作ることになった。
(本文インタビュー記事翻訳)
―あなたはどのような劇、どのような種類の舞台に関心がありますか?
学生時代から私はアンダーグラウンドやサブカルチャー、肉体的な舞台表現に関
心がありました。肉体が有するエネルギーの表出とその変換。これは当時のベト
ナム戦争やアメリカのやり方に反対する学生たちの反抗のエネルギーと共通する
ものがあったのです。その後、私は日本の伝統演劇を武智鉄二氏に学びました。
演技術だけではなく、日本の文化的なバックグラウンドに関して学んだのだと思い
ます。現代の日本人は自分たちの伝統文化のことをあまり知りません。たとえば
歌舞伎は、江戸時代には一般に大変人気がありましたが、いまではセレモニーに
近いものがあります。
―最近のあなたの仕事の中心は何ですか?
90年代から私は海外での活動を始めるようになりました。同時にユネスコ傘下の
ITI(インターナショナル・シアター・インスティテュート/国際演劇協会)の国際委員と
国際演劇交流の仕事もしています。
―『デズデモーナ』の特徴について話してください。
『デズデモーナ』はシェイクスピアの『オセロー』を下敷きに作られたものです。しか
し、この舞台の核となるのものは、オセローとデズデモーナの結婚によって生まれ
育った、人種間の'偏見'に焦点をあてたものです。人種の違いによる偏見はバル
カン半島だけでなく世界中どこにでもあり、日本にも異なった形で存在します。
たとえば、私は子供のころ、実の両親を知らずに育ったのですが、それを知った
私の友人たちの視線は異質な者への拒絶(いじめ)が作用していたと言えます。だ
から、人種の違いによる偏見だけでなく、あらゆるタイプの偏見が人間社会にあ
り、それは受け入れがたいものです。
―この劇では身体による表現にアクセントが置かれているということですが。
はい。もっとも伝えたいことは身体によって語るようにし、できるだけ言葉を少なくし
ています。スピーカーから言葉が語られ、俳優はその前で沈黙の表現をするとか。
―プーラはいかがですか。
良いところです。私は好きです。東京とまったく違うところが面白いです。1000万
人の人口を抱える東京は人々がつねに競争にさらされています。人々はレースに
勝つことを強いられ、すべてが早く変化し、困難で、でもエキサイティングでもある。
ここはもっとゆったりしていて、その点は好きです。日本ではいつも人の目が重要
で、互いにチェックしあい、他の人間がこうあるべき、ということに合わせ、規則や
約束事を守らないと生きてゆくのが難しい。もし、私が期日を守らなければ、確実
に信用を失います。
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